「おはよう!」
僕はボロボロになったくまのぬいぐるみに話し掛ける。
そう言えば、昔はうちもいい家族だったんだよなぁなんて昔を回想する。
こうなったのは、いつからだろうか?
「父さん、行ってらっしゃい!」
「母さん、行って来ます!」
学校に行って、下駄箱を開けた。
良かった。今日は上履きがある。
履くとベトッと音がした。
接着剤がびっしり上履きの底に塗ってあった。
「画鋲の次は接着剤か。」
僕は靴下なんて履いてないから、足の裏にびっしり張り付いた。
僕の同級生はニヤニヤしながら、僕のことを見ていた。
何が楽しいのか、僕には全く理解出来なかった。
今日は道徳の授業がある。
そこで、先生は言った。
「いじめなんて、あってはいけない。」
「いじめられる方は何も悪くない。いじめる方が悪い。もし、このクラスの誰かがいじめを受けていたら、直ぐに報告するように。」
僕がいじめを受けているのを見て見ぬ振りをするくせに、どの口が言うんだと思った。
学校が終わる頃、僕はびちゅびちょに上履きを水で濡らして接着剤を拭った。
足の皮が数枚めくれた。
家に帰ると、あいつ(母)が待っていた。
「母さん、ただいま。」
僕の声は震えていた。
バチンッ!!!
音よりも先にビンタをされるのが分かった。
あいつ(母)は酔っていると見境いなく、僕を殴り続けた。
バチンッ!!!バチンッ!!!
痛くはない。
いつものことだ。
「あんた、なんか産まれて来なきゃ良かったんだ。」
人は身体的暴力よりも精神的暴力の方が余程応えると最近知った。
父も帰って来た。
「また、殴ってるのか?」
「俺にも殴らせろ。」
親とは思えない会話が続く。
「もっと、やれー!!!」
5歳の弟が面白がって、僕が殴られてるのを楽しんでる。
この地は地獄だ。
こんな地獄がいつまでつづくんだろう、、、
僕は泣きながら、
「止めて、止めて」と訴えたが、あいつらに僕の声なんて届くはずなんてない。
僕は空気なんだから。
父と母の暴力が終わると、僕は自分の部屋に逃げ帰った。
くまのぬいぐるみは心配そうに僕を見つめている。
このぬいぐるみだけが僕の心の救いだ。
5歳の誕生日の時にお父さんとお母さんが買ってくれた。
「あの時の、お父さんとお母さんはどこに行っちゃったの?」
いつからだろう?
こんな家族になってしまったのは、、、
僕は一体何をしたのだろうか?
5歳の弟はなんで、あんなに笑えるのだろうか?
クラスメイトのあの子たちは何が楽しくて笑っているのだろうか?
僕には何がなんだか、分からなかった。
この世界で一人ぼっちの僕は夜に輝く星たちを眺めていた。