奇跡の目を持つ男の子

 僕には昔から変わったところがある。

 

どうも人と物の見え方が違うらしい。

 

色の見え方も当然違うらしい。

 

だから、友達は居ない。

 

価値感がまるで違う。僕にとっての当たり前が常識外れなのだ。

 

だから、僕は昔から友だちが欲しかった。

 

この友だちとは、僕と同じ目を持った者っていう意味である。

 

だから、僕は蝶とか蜜蜂とかが一番の理解者である。

 

サイクロプス症候群。

 

僕が付けられた病名だ。

 

なんでも、なんでも見れてしまうらしい。

 

その代償として、いつか僕は目が見えなくなる。

 

黒かった目が白に変わり、今の僕の目は緑色になっている。

 

黒かった時よりも白かった時よりも、僕は目が良くなっている。

 

僕はこの目で誰かを見たいと思った。

 

僕と同じ境遇の誰かを見たいと思った。

 

そして、見つかった。

 

鏡の世界の女の子。

 

僕は小学校の頃、自分が女の子だと思っていた。

 

それは、自分が鏡を見ると女の子が映るからだ。

 

女の子はジッと僕を見る。

 

そして言う。

あなたは普通の男の子よ。だから、こっちの世界に来てばかりじゃ駄目よ。

前を見て。あなたなら見えるでしょ!?

 

外側に広がった自由の世界が!

こっちの世界は嘘ばかり...右は左で左は右で。

真実を映す鏡なんて言われるけど、光がないと存在自体出来ないのよ。

 

僕は言った。

あなたたちの世界こそ、僕が望んだ世界だよ。

右が右である必要がなく、左が左である必要がない世界。

当たり前が当たり前じゃない世界なんて、凄く魅力的な世界じゃないか!

 

僕は続けて言った。

僕は君になりたい!

君さえ良ければ、世界を代えないか!?

 

誰かは返答した。あなたがいいなら、私もそうしたい。

 

光がある世界に私は行きたい。

 

こちらは盲目な闇が広がる虚像の世界だから。

 

こうして世界は代わっていった。

 

追伸。僕は幸せに暮らしています。

 

あなたはどうしてるかな?

 

たまには、僕を見てね!

 

あなたの瞳の中に僕は居るから!