写真に写らない

「あんた、また写真に写ってないよ。」

「あんた、本当は死んでるんじゃないの?」

 

またか。

俺は決して写真に写らない。と言うよりも写真に写ったことがない。

 

俺は本当に死んでいるのか?

この世に存在していない人間なのか?

 

でも、周りの人は僕を認知してくれている。

 

僕は考察を続ける。

 

ここは天国で。だから、俺は写真に写らない。

でも、俺以外の人たちは写真に写る。

この案はなしだ。

 

やっぱり俺が死んでいるんだ。

でも、何故周りの人たちは俺が見える。

 

頭がパンクしそうだ。

 

絵本の世界にでも入った気分だ。

絵本?ここって本の世界なんじゃないか?

でも、写真に写らないのは俺だけじゃないか。

 

ん?

そもそも俺と他の人たちは違うのでは。

 

そうだ。

俺が天国の住人だろうと存在してなかろうと俺だけ他と違う。

 

そうだ。

きっとここは夢の世界なんだ。

 

夢なら早く覚めてくれ。

 

それとも、仮想空間にいるのか?

 

夢にしろ仮想空間にしろ。どうやって出るんだ?

 

先(未来)に進むしかない。

 

俺はこの夢か仮想現実かも分からない世界から脱出した。

 

写真に写らなかったあの頃が懐かしい。

 

俺はもう老人だが、今を幸せに過ごしている。

 

真相はこうだ。

 

あの世界は夢でもあり仮想現実でもあった。

過去と言う名の。

 

カメラは過去を写すことが出来ない。また、未来も写すことが出来ない。

 

俺は過去でもあり未来でもあった。だから、写真に写らなかった。

 

しかし、現在。俺は今この時を生きている。

 

長い間気が付かなかったが。俺は今を生きている。

 

ならば、過去を振り返らず。未来に期待することもなく。

今を精一杯生きよう。

 

俺は今更ながらにそう思い誓った。