ブーブーブー、ブーブーブー。
「また、上司から電話だよ。勘弁してくれよ。」
「はい!お疲れ様です。何か御座いましたか?」
「それで、はい。はい。承知致しました。」
今日休みだったのに、休日出勤かよ。たまんないね。
まあ、部長の頼みなら仕方ないか。
「あ、理香子。今日さ、出勤になってさ。本当にごめん。埋め合わせ必ずするから。」
「理香子?」
電話の向こうが何やらおかしい。
「誠なの???」
「あんた、今どこにいるの?」
俺が応える。
「何言ってるんだよ!家に居るよ!」
電話の向こうから悲鳴にも取れる声で理香子が叫ぶ!
「そこに居て!!会社行っちゃだめ!!」
俺が応える。
「なあに、言ってんだ!部長に呼び出されてるんだからさ!行かないと!」
理香子がたたみかける様に叫んだ!
「あんた、何言ってるの!?覚えてないの!?」
「あんた、部長からパワハラ受けて首吊ったんじゃないの!!」
「いいから、そこに居て!!!」
俺は圧倒され、電話を切った。
状況を全く理解出来なかった。
俺が首を吊った???
あんなに幸せだったのに。
理香子が俺のアパートをノックする。俺はドアの鍵を開けた。
「誠!どこ?」
「理香子!俺はここに居るよ!」
どうやら理香子には俺は見えないらしい。
俺、やっぱり死んだんだ。
「誠、誠、誠!行く前に私に誠の姿見せて!」
俺は思い出した。理香子が好きな香水を俺は首もとにつけた。
「誠!!!」
「これで安心していける!」
「えっ!?」
俺は全てを思い出した。
俺が部長にパワハラにあい、会社で首を吊った。
部長が朝イチ出勤をしてくると知っていたからだ。
部長は俺を下ろし、俺を車の後部座席に乗せ、山奥に捨てに行ったのだ。
ずっと俺を探し続けてくれた理香子には感謝しかない。
「理香子、俺今日会社休むよ!」
「うん!!」
「部長さ、あのあと逮捕されてさ」
「他にもパワハラ受けてる子も居てさ!ひどかったよねぇ。。。」
「えっ?」
「私も首吊っちゃったんだ!」
「だから、あなたからも私見えてないでしょ!?」
「死ぬと不思議だよね?」
「後、玲奈と和くんと臣くんも!!!」
「あんたが全て我慢すれば皆死ななかったのに。」
「あんただけは許さない」
「私だけはあなたが自殺しない方に懸けてたのに」
「死ぬならもっと早く死んでくれたら、部長だって早く捕まったのに」
俺は涙が止まらなかった。